医学論文に使える英語表現を見つけるためのGoogle検索フレーズ③結果と考察
この記事では、医学分野の論文の「結果」および「考察」を英語で執筆する際に役立つ検索フレーズをご紹介します。
論文でよく用いられる英文のフレーズを引用符(” “)で括っているので、そのままコピーしてGoogleやGoogle Scholarで検索できます。ヒット数が少ない場合は、フレーズを分割して再検索したり、アスタリスク(*)を用いたワイルドカード検索を併用したりするのもおすすめです。
診断結果について記載するときの検索フレーズ
患者を主語として「患者は~と診断された」と記述する場合、「with 病名」または「as having 病名」と表現します。以下のフレーズでGoogle検索してみましょう。
“the patient was diagnosed as having”
“the patient was diagnosed with”
同じ「患者は~と診断された」という表現であっても、病変(lesion)や腫瘍(tumor)を主語とする場合は、withは使えないので「as 病名」と表現します。
“the lesion was diagnosed as”
“the tumor was diagnosed as”
それぞれの病名や診断(diagnosis)を主語にする場合は、次のように表現します。ここでは病名の例としてcancerを入れていますが、自身の研究テーマに合わせて適宜入れ替えて検索してみてください。
“cancer was diagnosed”
“a diagnosis of * was made”
「(病名)と確定診断された」または「(病名)の診断が確定した」と書きたい場合は、definitively(決定的に)やestablished(実証された、確立された)を用いて次のように表現します。
“was definitively diagnosed”
“the diagnosis of * was established”
“a diagnosis of * was established”
「診断された」という受動態ではなく能動態で表現したい場合は、「(所見から)~と診断した」のように書くのもよいでしょう。
“led to a diagnosis of”
“leading to a diagnosis of”
また、「臨床所見・検査所見によって~と診断した」という次のフレーズも参考になります。
“findings led to a diagnosis of”
“The clinical and laboratory findings led to a diagnosis of”
検査で判明したことについて無生物主語から文章を始める場合は、showed(示した)のほか、revealed(明らかにした)やdemonstrated(実証した)という動詞を用います。次のフレーズで検索すると役立つ例文を見つけられます。
「単純X線撮影で~が認められた」
“plain chest X-ray showed”
「切除標本には~が認められた」
“the resected specimen revealed”
「ウェスタンブロットにより~の発現が確認された」
“Western blot analysis demonstrated * expression”
「病理所見は~であった」
“Pathological examination showed that”
“Pathological examination revealed that”
“Pathologically,”
検査の結果が陽性(positive)または陰性(negative)であったことを表現するときも、前置詞の使い分けに注意が必要です。
まず、患者や検体などを主語とする場合は次のように表現します。
“the patient was positive for”
物質や検査、方法、技術などを主語とする場合は、forではなくinを用います。
“PCR was positive in”
“AFP was positive in * patients”
“The * test was positive in”
治療方針や治療の経過について記載するときの検索フレーズ
「~の投与を開始した」や「~の治療を開始した」と表現するときは、次のフレーズを用います。
“The administration of * was started”
“Treatment with * was started”
“Therapy with * was started”
なお、患者を主語として次のように表現することもできます。
“The patient was started on”
「~療法が奏効した」と表現するときはeffective(効果的)という単語のほか、次のような表現もできます。
“therapy produced a complete response”
“patients achieved a complete response after * therapy”
患者の経過が良好だったことを示すフレーズの一例をご紹介します。
「~日目に意識を回復した」
“regained consciousness on the * day”
「術後の経過は良好で、患者は退院した」
“The postoperative course was uneventful, and the patient was discharged”
「軽快し、退院した」
“was discharged with * relief of”
“was discharged with symptomatic improvement”
“was discharged * symptomatic improvement”
残念ながら「状態が悪化して死亡した」という場合は、次のように記述します。患者の性別にあわせて適宜主語を入れ替えてください。
“The patient’s * condition deteriorated, and he died”
「死因は~であった」や「患者は~で死亡した」という表現は、病死の場合は die of、外因死の場合は die fromと書くと多くの辞書で解説されています。ただし、実際の論文では外因死の場合でも die of を使った例が多く、die byという表現も多くみられます。
“die of”
“die from”
“die by”
なお、動詞のdieではなく名詞のdeathの後に続く前置詞は、病死であっても外因死であっても from または due toを用います。
“death from”
“death due to”
統計や比較研究の結果について記載するときの検索フレーズ
結果および考察のセクションで統計について記載するときに役立つフレーズをいくつかご紹介します。
アスタリスク(*)を用いたワイルドカード検索を活用すれば、「~の値は~と~の間に推移した」といった文脈の例文を見つけられます。
“levels remained in the range of * to”
“remained in the range between”
“remained within the range of”
“levels fluctuated between”
“the * level ranged from * to”
次のフレーズは、「~は増加傾向を示した」の表現です。Increase(増加)をdecrease(減少)に置き換えて検索するのもよいでしょう。
“showed a tendency to increase”
“showed a tendency toward an increase in”
“tended to increase”
「~が高いほど~が大きかった」のように比例関係について表現したい場合は、次のフレーズで検索して例文を探してみてください。
“The higher the * the greater the”
“A higher * was associated with a greater”
患者を2つのグループに分けて比較分析を行った場合は、両群に有意差があったかどうかを記載します。例えば「A群と比較してB群の~は有意に高かった」と書きたい場合、次のように表現できます。
“The * of group B was significantly higher than that of group A”
“was significantly higher in group B than in group A”
また、「~の点で有意差がなかった」と書きたい場合は、次のフレーズを参考にしてください。
“No significant difference was observed in * between”
“No significant difference was noted in * between”
“did not significantly differ from”
考察を記述するときの検索フレーズ
研究の結果に基づき考察を記述するときは、「以上から~と推察される」または「この結果は~を示唆する」と表現します。次のフレーズで検索し、参考になるフレーズを見つけてください。なお、observations(結果、所見)のほかにfindings(所見)やresults(結果)を主語にすることもできます。
“These observations suggest that”
“These observations led us to speculate that”
“These observations led to the speculation that”
何らかの可能性について言及するときは、次のようなフレーズが参考になります。
「(○○が~した)可能性が残る」
“The possibility remains that”
「~という可能性は否定できない」
“The possibility of * cannot be excluded”
“The possibility cannot be excluded that”
原因について考察する際は、次のフレーズが役立ちます。
「~の原因として~が考えられる」
“The possible causes of * are”
“The possible causes of * include”
“Possible causes are”
“Possible causes include”
「~の一因は、~であると考えられる」
“Presumably, this is partly due to”
“Presumably, this is partly because”
“One of the reasons for this appears to be”
“One of the causes of this is that”
考察セクションにおいてこれまでの研究において言及するときは、現在完了形を用いることが多いです。
「~であると報告されている」
“it has been reported that”
「~であると指摘されている」※suggestedのほか、proposedやindicatedも可
“It has been suggested that”
「~であると仮定されている」
“It has been hypothesized as”
「~と引用されている」
“It has been cited as”
また、文脈によっては現在形を用いて表現することもあります。
「~とみなされる」
“is considered to”
「~と信じられている」
“is believed to”
「~の機序は~であるとされている」
“The proposed mechanism of * is that”
今後の課題について記述するときの検索フレーズ
考察セクションの後半には、今回の研究ではまだ解決できなかった課題を記載します。例えば「今後の研究課題である」と書きたい場合は次のフレーズを参考にしてください。study(研究)のほかにresearch(リサーチ)やwork(成果、研究結果)などに置き換えてもよいでしょう。
“Further study is needed”
“Further studies are needed”
“It is a subject of future study to”
より具体的に、「今後は例数を増やして検討する必要がある」のように記述する場合は、次のフレーズを参考にしてください。アスタリスク(*)のところには、samples(サンプル数)やpatients(患者数)などが入ります。
“Further studies in more * are needed”
“Further studies involving more * are needed”
また、現在の技術や方法、薬剤・化学療法などについて「~することが期待できる」や「~への応用が期待される」と表現したい場合は、次のフレーズが役立ちます。
“hold the promise of”
“has the potential to be applied to”
同様に、「(~の治療法)は有望である」という表現もよく用いられます。
“therapy promises to”
“with * is promising”
結果・考察のセクションでよく用いられる英語表現
結果や考察のセクションでよく用いられる英語表現をまとめてご紹介します。短いキーワードだけで検索すると膨大な検索結果がヒットする場合もあるので、自身の研究テーマに関するほかのキーワードやフレーズを適宜組み合わせて検索することをおすすめします。
「症例によっては有効」
“effective in selected patients”
「これらの問題を踏まえて」
“in light of these problems”
「~を背景として」
“In the context of”
「~は否定的である」
“is unlikely to”
「~は否定的であった」
“was excluded”
「患者に合った薬物療法」※オーダーメイドは和製英語なので、tailor-madeを用いる
“tailor-made drug treatment”
“tailor-made drug therapy”
「(治療・投与量・評価・検査などを)患者に合わせる必要がある」
“should be tailored to the patient”
謝辞の表現に使える検索フレーズ
論文の最後には、論文の協力者や支援者、資金提供者に謝辞を掲載します。ジャーナルによっては、投稿規定に謝辞の部分で言及する相手に書面等で合意を得るよう指定されていることがあるので注意しましょう。さらに、該当する分野の国際誌に掲載された論文の謝辞に目を通して表現のパターンをつかみましょう。以下のフレーズでGoogle検索して、謝辞のバリエーションを見つけることもできます。
“We are grateful to”
“thanks are due to”
“this * was supported in part by a grant”
医学論文の「結果」と「考察」に役立つ検索フレーズは以上です。引用符(” “)やアスタリスク(*)を用いたGoogle検索法の詳細は、以下の記事もご参考ください。
英語論文の執筆に役立つGoogle検索法
Google検索を使いこなして英語で医学論文を書く
医学論文に使える英語表現を見つけるためのGoogle検索フレーズ①イントロダクション