英語論文の執筆に役立つGoogle検索法
Googleは論文を書くときに非常に役立つツールですが、文献や情報を検索するだけではありません。英文の用法の参考にしたり、論文でよく使われる表現のバリエーションを増やしたりするのにも役立ちます。英語論文を執筆する際に役立つGoogle検索法をご紹介します。
引用符(” “)で括ることで適切な検索結果を得る
単語や語句、フレーズを引用符(” “)で括ってGoogle検索することで、完全一致の検索結果を得ることができます。
たとえば、「~と報告されてきたように」を意味する”it has been reported that”というフレーズを引用符で括って検索することで、文献からの引用を含む表現を見つけることができます。引用するときに用いられる表現には、他にも”According to 〇〇,~”や”〇〇 noted that ~”といったフレーズがあります。引用の表現だけでなく、イントロダクションや材料・方法、研究の結論や謝辞など、英語論文によくあるフレーズを引用符で括って検索することで、自身の論文執筆に役立つ表現を見つけることができます。
引用符で括って検索する場合、フレーズが長すぎるとヒットする検索結果が少なくなることがあります。その際は、元のフレーズを2~3つに適宜区切って各フレーズを引用で括り、and/or検索を用いるのもよいでしょう。
たとえば、”it has been recognized that the treatment of”というフレーズで検索してヒット数が少なかった場合、”it has been recognized that”と”the treatment of”を組み合わせて検索することで、多数の例文をヒットさせることができます。
アスタリスク(*)を使用したワイルドカード検索を活用する
Google検索する際、半角記号のアスタリスク(*)を組み合わせることで、ワイルドカード検索ができます。アスタリスクは任意の文字列の代用として使える記号であり、ヒットする検索結果の幅が広がります。
たとえば、先ほど例に挙げた”it has been recognized that the treatment of”というフレーズの場合、適切な位置にアスタリスクを挿入し、”it has been recognized * the treatment of”と検索すると、間にさまざまな単語やフレーズが挿入された多数の文例がヒットします。フレーズを区切ったand/or検索と、アスタリスクを使ったワイルドカード検索を使い分けることで、よりよい検索結果を得ることができます。
アスタリスクは複数回挿入して検索することもできます。例えば、「○○の××に対する影響を△△法で調べた」という文章を書きたいとします。「調べた」にあたる表現として他にどんな動詞のバリエーションがあるか調べたい場合、アスタリスクを4か所に挿入して次のようなフレーズで検索します。
“The effect of * on * was * by the * method”
ヒットした文例を見ると、「調べた」にあたる表現としてmeasured, assessed, evaluated, examined, investigated, studied, determined などの動詞が使われていることが分かります。
前置詞の選択に迷ったときも、アスタリスクを使ったワイルドカード検索が役立ちます。例えば、患者の5年生存率について書きたいとします。その文脈において適切な前置詞が分からないときは、前置詞にあたる部分にアスタリスクを挿入して次のようなフレーズで検索します。
“the 5-year-survival rate * patients”
すると、この文脈で使える前置詞には of, for, in, among などのバリエーションがあることが分かります。
動詞や名詞をアレンジして検索する
検索フレーズ中の単語をアレンジすることで、さらに幅広いバリエーションの検索結果を得ることができます。動詞の場合は、時制を変えたり、能動態と受動態を入れ替えたりして検索してみましょう。名詞の場合は、単数形または複数形にアレンジして検索するのがおすすめです。
なお、英語論文においては動詞の時制を適切に使い分けて執筆することが大切です。たとえば、研究目的は過去形で、材料・方法および結果は過去形または過去完了形で書きます。イントロダクションや考察については、内容によって現在形・過去形・現在完了形・過去完了形・未来形を使い分けます。医学分野の論文に多い、患者の生存率や経過観察に関する表現は、現在形や現在完了形、現在完了進行形を使います。
Googleで英語論文のフレーズを検索する際の注意点
ヒット数があまりにも少ない場合は、検索するフレーズを選択し直しましょう。日本語の文章を英語に直訳するだけでは、適切な文例がヒットしない可能性が高いです。英訳表現を変えたり、短いフレーズから探ったりしましょう。
特定の分野の論文でよく使われる表現や文例を探したいときは、検索したいフレーズの後にその分野に特有のワードを加えてみましょう。例えば、医学論文によく用いられるフレー ズを知りたい場合は、フレーズを引用符で括った後に patient (s), symptoms, diagnosis, prognosis, surgery などの医学用語を加えて検索することで、分野を絞り込んだ検索結果を得ることができます。
ただし、ヒットした例文のなかには、ネイティブではない人が書いた誤った表現が含まれる場合があるので注意しましょう。学術論文に用いられている表現や文例だけを参考にしたい場合は、GoogleではなくGoogle Scholarで検索するのがおすすめです。医学・薬学分野の文献について調べたい場合は、米国立医学図書館が提供するオンラインデータベースMEDLINEも役立ちます。
英語論文を書くときに気をつけたい3つのポイント
最後に、英語論文を書くときに気をつけたいポイントを3つご紹介します。
ポイント①できるだけ能動態でストレートに書く
受動態の文章はインパクトに欠けるため、できるだけ能動態を用いてストレートな表現で書きましょう。その際、非生物主語を擬人化した表現を活用すると、シンプルな能動態で記述できます。
「これらの結果から、~ということが示唆された」と表現したい場合を例に挙げます。
日本語を直訳して
From these results, it is suggested that~
と書くのではなく、
These results suggest that~
というように、「結果」という非生物主語を擬人化して「これらの結果が示唆するのは~である」と書くことで、能動態の表現にすることができます。
ポイント②適切な冠詞を用いる
英語の非ネイティブにとって、英語における冠詞の用法は非常に難しいものです。使い分けに悩んだときはアスタリスクを使ったワイルドカード検索などを活用し、同じ分野の論文を参考にしながら適切な冠詞を選びましょう。
例えば、定冠詞theは特定された物事を示す単語に付けますが、判断に迷うこともあるかもしれません。医学分野の論文の場合、身体の部位や臓器、解剖学名など誰にとっても特定されている語には定冠詞theを付けて書きます。どこまでが「特定」された物事か悩むときは、「読者にとって特定されているかどうか」を念頭に置いて著者が判断します。
ポイント③無用の繰り返しや冗長な言い回しを避ける
英語の論文に限らず和文も同様ですが、論文では無用の繰り返しや冗長な言い回しを避け、簡潔明快に書きましょう。文節を長く続けてしまうと、文節同士の論理関係が分かりにくくなり、支離滅裂な文章になりがちです。特に、論文の考察や総説ではだらだらとした文章になりやすいので注意しましょう。