Googleの各種サービスと相性がよい文献管理ツール「Paperpile」のご紹介
過去に読んだ文献をいかに使いやすく管理するかは、今も昔も研究者を悩ませる大きな課題です。本サイトでも「Mendeley」、「zotero」、「EndNote」などの文献管理ツールをご紹介してきました。使いやすさはもちろんのこと、利用料金とストレージ(保存容量)のバランスなどさまざまな観点から、自分に合ったものを選びましょう。ここではGoogleの各種サービスと相性がよい「Paperpile」というツールをご紹介します。
Paperpileにはさまざまなメリットがある
Paperpileはブラウザ上で使用できる文献管理ツールで、Google ChromeおよびさまざまなGoogleのサービスに合わせて最適化されています。メリットは多数ありますが、ここでは特に3つご紹介します。
1つ目のメリットは、文献の収集が簡単な点です。Paperpile はGoogle Chromeの拡張機能であり、ワンクリックでPDFやウェブページをGoogleドライブ内にダウンロードできます。ハードディスクなどに保存したPDFを手動で文献リストに加えることもできます。書誌情報が欠けている場合に不足しているデータを自動的に検索して補完してくれる機能もあり、マニュアルで論文を登録する際にも役立ちます。
2つ目は、収集した文献を管理しやすい点です。シンプルな管理画面は直感的に操作でき、フォルダを作成して階層を追加したり、色つきのラベルを付与して視覚的にグループ化したりすることもできます。文献が重複している場合はワンクリックで整理できます。
3つ目は、文献の活用がしやすい点です。Paperpile上でPDFにハイライトをつけたりコメントを入れたりすることもでき、PDF編集ソフトを別途立ち上げる必要がありません。GoogleドキュメントおよびWord上で参考文献を引用するのも、ボタンひとつでスムーズに行えます。文献の末尾に参考文献一覧を掲載するのも簡単です。さらに、文献リストのリンクを取得してメールなどで共有すれば、Paperpileを使用しておらずアカウントを持っていない人にも文献のPDFが閲覧できます。共有フォルダを作成することで、複数のユーザー間で文献の追加や削除が可能となり、共同研究にも活用できます。
Paperpile は、Google Scholarを使って論文検索をすることが多い研究者やGoogleドキュメントで論文執筆をする研究者にとって、非常に利便性が高いツールといえます。
主なデメリットは有料かつ基本オンラインであること
このように、Paperpileは便利な機能を多く備えた使い勝手のよい文献管理ツールですが、デメリットもいくつかあります。もちろん使う人のとらえ方次第ですが、主なデメリットとして挙げられるものを2点ご紹介します。
1つ目のデメリットは、月額料金制であることです。無料のツールを探している人には向きません。とはいえ、利用料金はアカデミック用途の場合で月額2.99ドルと非常に安く、30日間の無料トライアルもあります。使用感を試してから継続するかどうかを決めるのもおすすめです。
2つ目は、基本的にはオンライン環境でなければ使用することができないことです。ただし、事前にGoogleドライブの設定をしておけば、オフライン環境でも文献を閲覧したり論文に引用文献を挿入したりすることも可能です。
その他のデメリットとしては、Google Chrome以外のブラウザでは使えない点と、日本語の論文検索には向かない点が挙げられます。2021年6月現在、Paperpileが対応している主な論文検索エンジンはGoogle Scholar、PubMedおよびArXivなどです。日本語の論文検索エンジンには非対応であり、たとえばCiNiiで検索した論文を追加する際は手動で文献情報を登録する必要があります。これは普段Google Scholarで文献を探すことが多い人にとってはデメリットとはいえず、問題なく使用できるでしょう。
なお、過去にはスマホやタブレットに対応していなかったことがデメリットとして挙げられていましたが、現在はiOSおよび Androidに対応しています。また、Paperpile for Word も同時にリリースされ、現在はWordでもGoogleドキュメントとほぼ同じ使用感で利用できるようになりました。
コストとストレージの面でバランスがよい「Paperpile」
他の主要なツールと比較しても、Paperpile はメリットが多くバランスのよい文献管理ツールといえます。無料で始められるツールと迷う研究者もいるかもしれませんが、Mendeleyは2GB、Zoteroは100MBまでは無料で使え、それ以降は容量に応じた料金がかかります。Paperpile は無料トライアル期間後に月額2.99ドルかかりますが、Google Drive上でPDFが同期されるため、15GBまでは無料です。コストとストレージの面では最もバランスがよい文献管理ツールであり、機能面でもメリットが多いといえます。今後のアップデートも期待できるので、ぜひ一度検討してみてください。