アンペイウォールで無料購読できる論文を多く探そう
現代においては、インターネットを利用して論文を購読するシステムが広く普及しております。しかしながら、オープンアクセスジャーナルなどといった読者への課金の一切無い学術論文を除くと、論文をオンライン雑誌から全文で入手するには料金が必要であり、加えて論文の購読料が高くなってきていることから、研究者らの間では、論文を出来る限り無料で入手することが重要視されています。そこで本項では、無料で入手できる論文のサーチを支援するためのインターネットサービス「アンペイウォール（Unpaywall）」について紹介しましょう。
膨大な数の無料公開論文の情報を網羅
アンペイウォールは論文をはじめとした学術情報に、よりアクセスしやすくするためのサービスを提供することを目的に設置された非営利団体です。現在2千万報以上の無料公開論文に関する情報を保有しており、なおかつ使用が簡単なこと、さらに海賊版入手サイトのような不正な手段で論文を入手する危険性がないことから、多くの研究者らに信頼を受けて利用されています。アンペイウォールでは、すでに世界中の50,000を超える出版社や何千もの図書館システムあるいは検索プラットフォームなどと提携しており、合法的に無料でアクセスできる論文コンテンツの検索などが簡単に行えるように出来ています。
ブラウザ拡張機能の利便性
インターネットを利用した従来の検索方法では、自分が読みたいと思って探し出した論文が、全文を読むには有料であった場合は、出版社にお金を払うか、あるいは図書館へ行くなどの手段を取らなければなりませんでした。それらの手段は非常に煩雑です。そこで、アンペイウォールのブラウザ拡張機能を使うと、今までの方法より簡単にその論文を無料購読できる可能性が生まれます。アンペイウォールをインストールすると、目的の論文を検索してその論文の掲載されている一次サイトを表示すると、ブラウザの右上に鍵の形をしたマークが表示されます。もしも、自分が探し出したその論文ページの鍵マークが灰色で表示されている場合は、現在ネット上に合法的な手段で入手できる無料版の論文が存在していないことを意味します。一方、鍵マークが緑色で表示されている場合は、他のサイト（例えばその論文の著者が所属している大学・研究機関などの外部サイト）を見ればその論文の無料配布版（PDFファイルなど）を読むことができることを意味しています。その場合は、表示されている鍵マークをクリックすれば、その論文の無料版が見られる外部サイトに辿りつくことができます。ちなみに、最初に自分で検索して探し出した論文そのものが無料で購読できる論文であった場合は、ブラウザ右上の鍵マークが金色で表示されますので、そのページで直接全文を読むことができます。
無料公開論文の重要性と今後の課題
このように、アンペイウォールを利用すると無料公開論文をかなり能率的に探し出すことができ、学術情報の収集が従来よりも簡単に行えるようになるでしょう。しかしながら、論文の掲載されている一次サイトそのものが有料で、他のサイトにも無料配布版が置かれていない論文というものは依然として多く、現段階ではアンペイウォールを利用しても無料配布版が見つからない論文というものが、オープンアクセス論文を除く論文全体の過半数を占めている模様だといわれています。
今後、各研究機関の内部などでも研究情報のオープン化を前向きに進め、各研究者らの業績PRも兼ねて、大学や研究機関ホームページなどで研究者らが自著論文をより多く無料公開するなどの試みが必要と思われます。
