英単語の選択-病態を例に
翻訳をしていて専門用語の判断に困ることがあります。
例えば、「病態」はインタネット版の辞書では下記のように出てきます。(複数のサイトをまとめています)
・ clinical condition
・ patient’s condition
・ clinical state
・ disease state
・ pathological condition
・ state of illness
・ pathophysiology
・ pathology
同じ日本語でもたくさん英語があるなあという問題ではありません。
臨床医が使われる「病態」が曖昧で、1)病的状態なのか 2)病態生理(発病機序、発症機序)なのかはっきりしないことがあり、どの意味なのか明確でないことがあるのです。
1)病的状態の場合
ある翻訳士は、「…は…な(形容詞)病態である」となっている場合は、病的状態として単語を選択していますが、その場合でもpatient’s condition(病状) と state of illness を使用せず、a medical condition または単に a conditionを使っています。 その選択基準は、Googleのフレーズ検索で ”is a ~in which”という用例が多数ヒットすることです。
(例)
●obesity is a condition in which …
●hypertension is a condition in which …
●… disease is a medical condition in which …
●osteoporosis is a medical condition in which …
2)病態生理の場合
ある翻訳士は、文章が「…の病態は不明である」「…の病態を検討する」となっている場合は、病態生理と解釈して単語を選んでいます。しかしながら、発症機序という意味と推定しましたら、上記のリストにはないですがpathogenesisを選択しています。
曖昧な文章でも、翻訳士は一番適切と思われる単語を選んで、訳出します。もし、著者の意図する単語でない場合は、納品後に修正が必要になります。そういう過程を経て論文の完成となることをご理解いただければと思います。
病態の翻訳例を、下記に幾らか載せておきます。(弊社の訳ではありません)
一つの日本語がいろんな英語になるってことを見ていていただければと思います。
当社は、これを好機としてとらえ、 病態 へ の 理解やガイドラインに基づく診断・治療の浸透に向けて取り組んでおります。
We have seized this opportunity to promote a better understanding of clinical conditions and guideline-based diagnosis and treatment.
ブラジキニンは気道の炎症における重要なメディエータであり、喘息の病態生理学に関係あるとされてきた。
Bradykinin is an important mediator of airway inflammation and has been implicated in the pathophysiology of asthma.
この新たなストレス負荷システムにより、新たな中枢神経系病態メカニズムの解明に繋がる研究が期待できる。
Use of this new experimental system in research may lead us to the discovery of new pathological mechanisms in the central nervous system.