Science News

ハゲタカジャーナルへの掲載は将来的なマイナス要因

オープンアクセスジャーナル(OA)の普及当初から問題視されてきたハゲタカジャーナルは、現在もなお猛威を振るっており、なおかつ如何にもレベルの高い正当な学術雑誌出版社であるように見せかける手段も巧妙になっています。論文原稿がほぼ確実にアクセプトされるなどという目先の利益に囚われないためにも、我々はこの問題について真剣に考えていかなくてはなりません。

ハゲタカジャーナルの中でも極めて悪質なパターンは、自分達の出版社がまともな学術雑誌出版社であるかのように装い、正式に研究者に依頼して原稿の査読をさせるものの、あくまでもその査読をほとんど形だけのものにして、最後は必ずと言って良いほどの割合でアクセプトする、といった無意義な査読プロセスを取り入れているパターンです。このような行為が繰り返される事により、投稿論文の数が増えれば著者から徴収する掲載料の額が増え、その出版社は大変良い思いをします。しかし、その過程で沢山の人々が時間や労力を無駄にしてしまっている、という事を忘れてはいけません。

一番無駄を強いられるのはあくまでも著者たちです。彼らは早く自分達の研究成果を世界に公表したいので、厳正な査読が行われている一流の学術雑誌に成果を掲載したい願望を強く持っています。そのような著者らを騙して一流の学術雑誌を装い、論文の投稿を促してくる出版社が近年非常に多くなっていますが、そのような詐欺まがいのやり方が横行すると、著者らだけでなく、その雑誌を正当な学術雑誌と信じて真面目に査読の仕事で貢献をしてきたはずの査読者らにも多大な迷惑が掛かります。一般に査読というものは、一切の金銭を受け取らずに殆ど無償ボランティアのような形で行われる場合が多いです。査読に当たる研究者は原稿を隅々まで厳しくチェックし、雑誌編集者に対して専門的知見から色々とアドバイスを与えなくてはなりません。しかし、彼らがどんなに真面目にアドバイスしようとも最後は必ずアクセプトするなどという馬鹿げた審査が横行すれば、査読者にとって貴重な時間と労力の浪費になるだけでなく、自分自身がハゲタカジャーナルで査読を行っていたという履歴が残る事により、自分自身の研究者としてのイメージ低下につながります。

外部資金に依存する共同研究の場合となると、さらに多くの人や団体に迷惑を掛ける事になります。

限られた期間で成果が求められる共同研究において

一般に外部資金に依存した共同研究というものは、何年以内に少なくともどれだけの成果を上げる、というノルマを持って行われるものです。ほとんどの場合は発表論文数で評価されますが、万が一その研究が思ったように捗らず、自分達が目標としてきた結果を出せなかったような場合は、一流の学術雑誌に論文をアクセプトさせるという事は非常に厳しくなってしまいます。研究者らのそのような弱みに付け込んでくるのがハゲタカジャーナル出版社です。そういう出版社は一流の学術雑誌に中々アクセプトされない研究者を巧みに唆し、自分達の経営する出版社に論文を投稿させようとしてきます。研究者のほうも、論文を一報も書かずに挫折するよりはそのようなOAに掲載したほうがまだ良い、と割り切ってハゲタカジャーナルであることを承知の上で投稿してしまう事も多くなっています。研究者が保身のため、あるいは目先の利益だけに拘ってそのような投稿の仕方をしてしまうと、将来的に自分自身の研究者としての評価がマイナスになってしまいます。

加えて、共同研究においてその研究チームに研究資金を出資した団体もまた、間接的にではありますがそのハゲタカジャーナルへの論文掲載に加担したという扱いになってしまい、研究資金出資団体としてのイメージが大きく低下しかねません。

海外のリストなどを参考にし、ハゲタカジャーナルを避けよう

このように、一度ハゲタカジャーナルに論文を載せてしまうと、その研究者自身の将来的なマイナスにつながるだけでなく、関与した査読員、外部資金提供者(共同研究者)たちにも悪い影響が及んでしまう事になります。こういった深刻な事態は当然のことながら避けなくてはなりません。 もしも、研究者がとあるOA出版社などから論文投稿を勧められたりした場合は、まずその雑誌がハゲタカジャーナルでないかどうかを念入りにチェックしましょう。海外のサイトで、ビールズ・リストと呼ばれるものは非常に有名で、現在の段階でハゲタカジャーナルと見なされているOAのリストが載っています。さらに、まともな一流の学術雑誌であることが確認されている学術雑誌のリストも存在しますので、それも参考にすると良いでしょう。 学術雑誌だけではありません。学術集会などにおいてもハゲタカ学会などというものが存在し、参加者からの参加費徴収だけを目的とした金儲け主義の団体である事が多いため、こういった学会に参加してしまうと金銭的に損をするだけでなく、やはり研究者自身のマイナスイメージにつながってしまいます。こちらに関しても、海外のリストなどを参考に、くれぐれもハゲタカ学会と呼ばれる集会には参加してしまわないよう気を付けることが重要です。

参考文献

熊本大学 URA推進室 分析Topics

  • 英文校正
  • 英訳
  • 和訳
※価格は税抜き表記になります