科学技術の状況にかかる総合的意識調査2019~女性研究者と若手研究者の活躍
世界の科学技術研究は日々変化し、中国など新興国による研究成果が高く評価されるようになっています。それに伴い、日本も科学技術分野で世界的な競争力を維持するには、研究環境の整備、研究者の待遇改善など多くの課題があります。
令和2年4月6日には、今回で5回目の実施となる文部科学省による「科学技術の状況にかかる総合的意識調査」の結果が公表されました。
そこで今回は、その中でも女性研究者と若手研究者を取り巻く環境について調査から浮かび上がった現状を詳しく解説します。
科学技術の状況に係る総合的意識調査とは?
科学技術の状況に係る総合的意識調査とは、文部科学省化学技術・学術政策研究所(NISTEP)によって2016年から行われている調査です。日本の科学技術やイノベーション創出の状況変化を把握するための継続的な試みであり、今年で5回目を迎えました。
この調査では、研究人材・研究環境・産学官連携等の観点から、産学官の一線級の研究者や有識者が計63問のアンケートに回答する方式で行われています。
質問内容は、「研究人材」・「研究環境・研究資金」・「学術研究・基礎研究と研究費マネジメント」・「産学官連携とイノベーション政策」・「大学改革と機能強化」・「社会との関係進化と推進機能強化」といった6つのパートに分けられています。
今回の調査では、回答を依頼した2710名の内、回答率は90.6%と連年並みに高い水準を維持することができました。自由記述による意見も多く、研究者や有識者の現場の声を反映したよいデータが得られたといってよいでしょう。
女性研究者と若手研究者を取り巻く環境の現状は?
今回の調査ではいくつかの特徴的な結果が得られました。そのうち、今回は女性研究者と若手研究者を取り巻く環境の現状について詳しく見ていきましょう。
63の質問の指数のうち、絶対値が高かった上位10位を見ると、「新たな課題の探索・挑戦的研究に対する科学研究費助成事業の寄与」がトップであり、そのほかにも「女性研究者が活躍するための人事システム(採用・昇進)等の工夫」や「博士課程学生が自主的に研究テーマを見いだし、完遂するための指導」など以前は厳しい状況に置かれていた女性研究者や若手研究者の研究環境を改善する動きが見られています。
また、前回の調査結果と比べて更なる改善が見られた質問項目を見ると、トップは「女性研究者が活躍するための環境改善(ライフステージに応じた支援等)」です。また、学部学生の育成や研究への動機づけを与える教育、若手研究者に自立と活躍の機会を与える環境整備なども上位に食い込んでおり、年々女性研究者・若手研究者の環境は改善されつつあることが伺えます。
女性研究者と若手研究者に期待されるさらなる科学技術分野の発展
今回の自由記述による調査では、近年は女性研究者や若手研究者を中心とした採用も大きく増えていることがわかりました。
競争が激化する科学技術の分野で日本が台頭していくには、女性や若手の新たな力が必要とされていることは間違いありません。彼らを取り巻く環境は少しずつ良くなっているとはいえ、まだまだ不完全な状態です。
日本の科学技術の進歩のため、今後もさらなる環境整備が進み、多くの有能な女性や若手がQOLを維持しながらも研究に専念できる環境を作ることが大きな課題となるでしょう。