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学術書籍もオープンアクセスに?オープンアクセスに対する調査を分析

世界中の情報がインターネットを通じて即時的に入手できるようになった昨今。かつてのように論文や文献収集にかかる手間は大幅に軽減されています。また、近年では、自由に医学研究に必要な情報や最新トピックスを閲覧できる「オープンアクセス」という制度も一般的になりつつあります。

そこで、世界的な学術出版社「シュプリンガー・ネイチャー」は、学術書籍や研究データのオープンアクセスに対する意識調査を実施しました。今回は調査結果について詳しく分析します。

学術書籍もオープンアクセスの時代が到来か?

シュプリンガー・ネイチャーは2019年2月から3月にかけ、世界の学術書籍著者2,542人を対象にオープンアクセスに対する意識調査を行いました。

その結果、「今後出版する学術書籍のすべてをオープンアクセスにすべきである」と回答した著者は過半数に上ったとのことです。オープンアクセス出版は、地域や経済格差にとらわれない公平な情報収集を可能にし、より多くの読者に情報を届けられるというメリットがあります。今回の調査においても、科学者が学術書を出版する最大の動機は「多くの読者に情報を届けたい」・「分野を越えて自らの研究の議論を推進したい」という2点であることが分かりました。そのため、学術書籍のオープンアクセス化は世界中の科学者に利益をもたらすだけでなく、著者の願いをかなえるシステムと言ってよいでしょう。

一方で、調査対象となった著者のうち、オープンアクセス出版の経験があるのはわずか407人とのこと。オープンアクセス出版はまだまだ一般的に普及しているシステムではなく、世界的な認知度の低さ、資金の少なさなどに不安を抱える著者も多いことがわかりました。

今後は、オープンアクセス可能な書籍の認知度向上や経済的負担のないシステムの構築が望まれるところです。

研究データの共有~日本の研究者たちの現状は?

同じく、スプリンガー・ネイチャーは日本の研究者約1,000人を対象に、研究データ共有の意識調査を行いました。

その結果、95%の研究者がすでに研究データをオープン化。データの共有は、研究の透明性・公開性・効率性を確保し、研究施設間の連携につながる可能性があるとして一般的なシステムとなっています。一方、調査対象となった研究者の62%が公私ともにデータを公開しているのに対し、36%は限られた同僚などとの間でしかデータを共有していないこともわかりました。世界平均では研究者の70%が公私にわたるデータ共有をしているとの情報もあり、日本は「オープンサイエンス」というシステム構築がやや遅れていると考えられます。その背景には、データの乱用や著作権・及びライセンスの問題があるようです。

また、今回の調査結果によると、データ管理計画(DMP: Data Management Plan)を作成している研究者はわずか56%であることも分かりました。DMPは研究データ収集・保存・共有方法について定める文書であり、適正な研究データ共有に不可欠と考えられるものです。DMPを作成してこなかった理由としては、「DMP自体を知らない」・「所属先から求められていない」・「主要な資金提供者のどのような要求がDMPに関連しているかを知らない」といったことが挙げられます。

様々な研究分野で世界に対抗していくため、今後は日本に於いてもオープンサイエンスシステムの浸透が望まれます。そのためには、システム作りだけでなく、研究者の意識改革やオープンサイエンス手法などの周知が必要です。

参考文献

Springer Nature The future of open access books: Findings from a global survey of academic book authors

シュプリンガー・ネイチャー 日本におけるオープンサイエンスの実現に向けて:研究データの共有には広い範囲の連携と優れた実施例が求められる

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