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全世界に大きな影響を与える高被引用論文著者

研究者は、自分の研究成果を伝えるために、学術論文を執筆します。そして、その個々の論文が、世間に対してどの位大きな影響を与えているのかが非常に重要となります。アメリカの情報サービス企業「クラリベイト・アナリティクス」では、高被引用論文著者2018年版を発表し、全世界に対して強い影響力のある研究者や所属国・機関などを公表しました。

学術論文などに関する評価指標の歩み

昔から、学術論文の影響度を推し量るための指標としては、インパクトファクターが使われています。しかし、インパクトファクターの場合は、論文が掲載されている学術雑誌全体の論文の被引用数合計値を元に算出されるものであるため、掲載されている個々の研究論文の影響度すなわち被引用回数までは、調べることができないという難点があります。後にオルトメトリクスやh指数などといった、個々の研究論文及び論文著者となっている研究者そのものが世間に与える影響度についても、指標化できる概念が取り入れられるようになりました。しかし、これらの指標だけでは、異なる学術分野間の研究成果の比較には適さない、あるいは学術雑誌への引用回数以外の一般世間への影響力を調べることまではできない、などといった不十分な点もあります。

そこで、クラリベイト・アナリティクスでは、異なる複数の学術分野にまたがって大きな影響力のある研究者まで調べられる指標として、高被引用論文著者という概念を設け、その2018年度版を発表しました。

全世界に大きな影響を与えた研究者とその出身国

世界最大規模の論文検索システムであるWeb of Scienceで網羅されている自然科学及び社会科学の21の研究分野において、今回の調査の結果、4,000人以上の高被引用論文著者が選出されています。国別にみると、高被引用論文著者が最多だったのはアメリカで2,639人、2位がイギリスで546人、3位が中国で482人でした。日本は上位10位にはランクインしていませんでした。日本から高被引用論文著者に選出された研究者は90人で、その所属機関をみると最多は理化学研究所の12名、次いで東京大学の10名が選出されました。

今回高被引用論文著者に選出された研究者のうち、約2,000名の研究者が、複数の学術分野にまたがる形で、引用回数の多い論文を発表していることも明らかになりました。他方で、高被引用論文著者は60カ国以上から選出されていましたが、そのうちの7割以上の研究者が上位数カ国から選出されていることも明らかになり、国による選出者数の大きな偏りがみられていたのも事実です。

高被引用論文著者という概念の誤解釈を避けるために

ここで注意しなければならない点は、「高被引用論文著者に選出されている研究者は皆、優秀な研究者である」という拡大解釈をしてはいけないという点です。このことに関して簡単に説明すると、ここでいう被引用回数というのは、その論文が他の論文で引用された回数の総数を表しているだけに過ぎず、その論文をポジティブに評価する形で引用したか、あるいはネガティブな評価を下したり批判したりするための材料として引用されたのか、ということまでは区別ができないためです。なので、批判するための材料などとして引用された論文の数が多い研究者も、当然のことながら高被引用論文著者に選出されている可能性が高いからです。国によっては、論文の捏造などが社会問題になっているにも関わらず、高被引用論文著者数の上位国に入っているパターンもあるのが現実です。

高被引用論文著者に選出された研究者が、本当に優秀な研究者なのか否かについては、実際にその研究者の執筆した論文そのものを自分の目で読んで確かめることが必要となります。研究者自身が今後執筆する論文の中で、どういった論文をポジティブな形で引用し、どんな論文を批判などのための叩き台として引用するべきかを決めるためにも、日頃から高被引用論文著者に選出されている研究者の原著論文に目を通しておくのも良いでしょう。

参考資料

クラリベイト・アナリティクス クラリベイト・アナリティクスが高被引用論文著者2018年版で、 影響力のある科学研究者およびその機関を発表

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