2016年のインパクトファクターを読み解く
2016年のインパクトファクターが発表されました。今年も医学ジャーナルを中心に、インパクトファクターの動向を考察します。なお、昨年まではトムソン・ロイター社がインパクトファクターを発表していましたが、昨年10月に担当事業が売却され、今年からは新しく設立されたクラリベイト・アナリティクス社が担当しています。
『NEJM』への一極集中が加速
一般に「世界五大医学ジャーナル」と呼ばれるジャーナルのインパクトファクターは以下のとおりです(かっこ内は昨年の数値)。
The New England Journal of Medicine: 72.4 (59.6)
The Lancet: 47.8 (44.0)
Journal of American Medical Association: 44.4 (37.7)
British Medical Journal (BMJ): 20.7 (20.0)
Annals of Internal Medicine: 17.1 (16.4)
『The New England Journal of Medicine (NEJM)
』はついに70の大台超えとなりました。昨年の記事では『NEJM』への一極集中を予想しましたが、それがより現実的なものとなりつつあります。大規模臨床試験について知りたいときはまず『NEJM』内で検索する、という流れができているといえます。
他のジャーナルも軒並み増加しました。これは、医学研究全体が加速していると読み取ることができそうです。
オープンアクセスジャーナルは冬の時代に突入か
一方で、大きく伸び悩んだのがオープンアクセスジャーナルです。『PLOS Medicine』は昨年の13.6から11.9、ネイチャー・パブリッシング・グループの『Scientific Reports』は5.2から4.3と、いずれも1割以上減少しました。
2014年10月にオープンアクセスジャーナルとなった『Nature Communications』は昨年の11.3から12.1と増加しましたが、この勢いが続くと楽観視するのは禁物でしょう。
古参のブランドジャーナルに信頼性が集まるのか
オープンアクセスジャーナルに掲載するためには掲載料を支払う必要があり、高いものでは60万円以上が必要です(執筆時点では『Nature Communications』は66万1500円)。研究手法が複雑化し、高価な機器を必要とする現在では、掲載料は大きな負担となってしまいます。
それならば掲載料を研究費用に回し、従来型のジャーナルに投稿するのがよいと考える人たちが増えているのかもしれません。そして、従来型のジャーナル、特に古参のブランドジャーナルのほうが、よりお金がかかった信頼できる研究成果が掲載されているというイメージができあがっていると考えることもできます。
オープンアクセスジャーナルはインターネット時代ならではの画期的な仕組みとして注目されてきましたが、その存在が今一度見直される時期にさしかかっているのではないでしょうか。