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インパクトファクターとは?概要と注意点を解説

インパクトファクター(Impact Factor:IF)は、公開論文数と引用された回数をもとに導き出される、ジャーナルの影響度に関する評価指標です。同じ分野の雑誌を比較する定量的な指標であり、論文を投稿するジャーナルを選択する際の基準として活用できます。インパクトファクターの概要と注意点について解説します。

インパクトファクターとは

インパクトファクターは、対象年の前2年間に掲載された論文を基準として、以下のような計算式で算出されます。

対象年に引用された回数÷対象年の前2年間に公開された論文数

例えば、あるジャーナルの2023年のインパクトファクターを調べたいとします。対象年である2023年中に引用された回数が計2,500回であり、前2年つまり2021~2022年に公開された論文数が1,000本だった場合、以下のような計算式になります。

2,500÷1,000=2.5

したがって、そのジャーナルの2023年におけるインパクトファクターは「2.5」ということになります。

インパクトファクターの目安

インパクトファクターの数値には明確な目安はありませんが、一般的には1~2程度になることが多いとされています。インパクトファクターが5以上だと高いといわれており、10以上の場合は高く評価されている雑誌といえます。

シュプリンガー・ネイチャー社では、公式ホームページのなかで各ジャーナルのインパクトファクターを公開しています。例えば、2023年における「Nature」のジャーナルインパクトファクターは50.5と非常に高く、ジャーナルとしての影響度の高さがわかります。

高いインパクトファクターを誇るジャーナルに論文が掲載されると、その影響力により、研究者としての評価が上がることが期待できます。しかしながら、後述するようにインパクトファクターはあくまでジャーナルの評価指標であり、そこに掲載されている論文やその研究者自体の評価とイコールではないことに注意が必要です。

インパクトファクターのデータベース

インパクトファクターは、ジャーナル自らが公式ホームページ等で公開しているほか、以下のようなデータベースで調べることができます。

Web of Science
クラリベイト・アナリティクス社が提供するオンラインデータベースです。なお、クラリベイト・アナリティクス社の前身である科学情報研究所は、インパクトファクターの提唱者でもあるユージン・ガーフィールド氏が創設しました。

Journal Citation Reports(JCR)
JCRもクラリベイト・アナリティクス社が提供するオンラインデータベースであり、Web of Scienceから取得した出版・引用データが集約されていて、より詳細に調べることができます。

インパクトファクターの注意点

インパクトファクターの活用にあたっては、さまざまな注意点があります。主な注意点を3つ解説します。

異なる研究分野間のジャーナルを比較する際には使えないこと

研究分野が異なれば、母数となる研究人口の数や論文の引用傾向などが異なります。そのため、異なる研究分野間のジャーナルを正しく比較することはできません。

小規模な学術雑誌や時事的なテーマの場合は正確な指標が得にくいこと

ジャーナルによってはそもそもの掲載論文数が少ないものもあり、被引用回数と公開論文数で計算すると偶発的にインパクトファクターの指数が高く算出されてしまうことがあります。また、トレンドに上がった論文や時事的な研究テーマなど、瞬間的に多数引用された論文が含まれる場合に高く算出されやすく、ジャーナル全体の評価としては正確とはいえない場合があります。

あくまでジャーナルのための指標であり、論文や研究者の評価には活用できない

インパクトファクターは、ある研究分野のなかでそのジャーナルがどれくらいの影響力を持っているかを評価するものであり、そこに掲載されている論文やその著者の評価ではありません。論文や研究者を評価する際は、論文の被引用数を基準として研究業績を分析できる「InCites」などのツールがおすすめです。

また、論文の閲覧回数・引用回数、SNSやニュースサイト等での言及、他の研究者による推薦などをもとに社会的なインパクトも反映した「オルトメトリクススコア」は、個々の論文を評価する際に活用できる指標です。

インパクトファクターを活用して最適なジャーナルを選ぼう

論文の投稿先としてジャーナルを比較検討する際は、上記の注意点に配慮しながら、インパクトファクターを活用しましょう。
なお、インパクトファクター以外にも、論文の被引用数を基準として評価する指標はさまざまなものがあります。5年インパクトファクター、即時性指数(Immediacy Index)、アイゲンファクタースコア、オルトメトリクススコアについては、こちらの記事もご覧ください。

関連記事:算出方法によって評価するものが異なる引用数指標

参考文献

nature portfolio — Journal Metrics

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