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シュプリンガー・ネイチャーのゴールドオープンアクセス(OA)についての報告

2021年10月26日に開催された文科省科学技術・学術審議会の第21回情報委員会において、オープンアクセス(OA)ジャーナルの普及に伴うさまざまな課題が検討されました。その一つとして挙げられたのが、ハゲタカジャーナル(研究費の搾取を目的とした粗悪な学術誌)に関する課題です。文部科学省の発表資料をもとに、ハゲタカジャーナルに対して大学がどのような対応を行っているか解説します。

白書「Going for gold」の4つの要点

白書「Going for gold」では、ハイブリッド誌に掲載された「ゴールドOA論文」、オープンアクセス化されていない「非OA論文」、最終公開版よりも古いバージョンがグリーンOAとして公開されている「購読型論文(ここではグリーンOA論文等とする)」について、さまざまな指標を調査し比較しています。過去の白書においてもゴールドOA論文は非OA論文より優位性があると報告されていましたが、今回の白書ではグリーンOA論文等と比べても明確なメリットがあることがわかりました。

1、ゴールドOAは引用されやすい

白書ではまず、OAとして公開されている論文が、他の論文にどれくらい引用されたか(被引用数)が比較されています。グリーンOA論文等は非OA論文に対して1.07倍多く引用されている一方、ゴールドOA論文は非OA論文の1.64倍も多く引用されていることがわかります。

2、ゴールドOAはダウンロードされやすい

同じくダウンロード数について比較した場合にも、ゴールドOAは大きなメリットがあることがわかっています。グリーンOA論文等のダウンロード数は、非OA論文に対して約1.1倍と大きな違いはありません。その一方で、ゴールドOA論文のダウンロード数は非OA論文の6.02倍にも上っています。

3、ゴールドOAはオルトメトリクスの注目と関心も高い

論文の評価指標として近年注目されている「オルトメトリクススコア」についても、この白書では調査されました。グリーンOA論文等の場合、注目と関心(attention and awareness)は非OA論文の2.1倍となっていますが、ゴールドOA論文は非OA論文の4.91倍と、非常に高いスコアを誇っています。

4、各分野においてゴールドOA論文のほうが影響力は高い

この白書では、生物学、医学および公衆衛生、工学、数学、化学、材料工学という6つの主要な学術分野ごとの調査もされています。分野によって差はあるものの、ゴールドOA論文がもつ影響力はいずれの分野においてもグリーンOA論文等および非OA論文の影響力を上回っていることがわかります。

研究者にとっても論文の著者にとってもゴールドOAのほうが望ましい

この白書では、優位性のあるグリーンOA効果はなく、ゴールドOAのほうが大きな影響力を持っていると結論づけています。実際、出版後すぐにOA化することで、研究者たちにとってその論文を利用しやすくなるだけでなく、著者にとっては広くリーチし高く注目されるため大きな利益を得られる結果にもつながります。

シュプリンガー・ネイチャー社は、この結果に基づき、研究者および著者にとって恩恵のあるゴールドOAを発展させるため投資し続けるとしています。

なお、シュプリンガー・ネイチャー社が発行するNatureおよび32の関連誌においては、2021年1月より、著者に対して即時OA出版のオプションが提供されています。希望するすべての著者が、ゴールドOA形式で出版できるようになったのです。論文掲載料(APC)はジャーナルによって異なりますが、たとえばNature Computational Science でOA出版するためのAPCは9,500ユーロ(本日のレートで約121万円)となっています。

参考文献

[プレスリリース] シュプリンガー・ネイチャーの新たな調査は「Going for Gold(ゴールドOAを追求)」の価値を確認
Springer Nature — Going for gold: exploring the reach and impact of gold open access articles in hybrid journals
白書の原文はこちらから
[プレスリリース] シュプリンガー・ネイチャーがNatureおよびNature関連リサーチ誌においてゴールドオープンアクセス出版のオプションを2021年1月より提供開始

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