2014年のインパクトファクターから見るジャーナルの傾向
2014年のインパクトファクターが2015年6月に公開されました。主要ジャーナルのインパクトファクターを去年と比較しながら、今後の傾向について考えます。
有名ジャーナルは高インパクトファクターを維持
一般に「世界五大医学ジャーナル」と呼ばれるジャーナルのインパクトファクターは以下のとおりです(かっこ内は昨年の数値)。
The New England Journal of Medicine: 55.9(54.4)
The Lancet: 45.2(39.2)
Journal of American Medical Association: 35.3(30.4)
British Medical Journal (BMJ): 17.4(16.4)
Annals of Internal Medicine: 17.8(16.1)
いずれのジャーナルも昨年に比べ、順当に数値を伸ばしています。特に、『Lancet』と『JAMA』は5ポイント前後も数値を伸ばしました。
昨年このページにて、「有名ジャーナルは大規模臨床研究が掲載されることで被引用回数が増え、高いインパクトファクターを維持する」と予測しましたが、そのとおりの結果となりました。この傾向は今後も続くと思われます。
伸び悩みが目立つオープンアクセスジャーナル
一方で、オープンアクセスジャーナルは伸び悩みが目立ちます。『BMC Medicine』は7.3から7.2に微減、『PLOS Medicine』は14.0から14.4に微増するにとどまりました。『PLOS Medicine』は、2010年から3年連続で15.0以上を維持していたことを考えると、伸び悩んでいるとも見ることができます。
オープンアクセスジャーナルは無料で閲覧できるため、読者の目に付きやすいはずなのですが、披引用回数の劇的な向上にはつながっていないと読み取れます。ただし、オープンアクセスジャーナルは論文の掲載数が多くなる(インパクトファクターの分母が大きくなる)傾向があるため、一概に「引用されにくい」という判断はできません。
とはいえ、『PLOS Medicine』のように、インパクトファクターを2桁で維持することはたやすいことではありません。そのため、昨年同様、「オープンアクセスジャーナルにも高い数値を持つものがある」という傾向は今後も続くでしょう。
投稿先を決めるときの、ひとつの参考値
最近では、社会的注目度を評価するオルトメトリクスの導入など、インパクトファクターだけで論文やジャーナルの全てを評価できる時代ではなくなってきました。それでも、論文の投稿先ジャーナルを決めるうえで、ひとつの参考となる数値であることに変わりはないでしょう。
なお、インパクトファクターを調べる方法には二つあります。一つは、トムソン・ロイターが発行する「Journal Citation Reports」にアクセスする方法です(研究機関が契約を結んでいる必要があります)。
http://about.jcr.incites.thomsonreuters.com
もう一つは、各ジャーナルのウェブサイトで確認する方法です。紹介した世界五大医学ジャーナルはウェブサイトに記載しています。
http://www.nejm.org/page/media-center/fact-sheet
http://www.journals.elsevier.com/the-lancet/
http://jama.jamanetwork.com/public/About.aspx
http://www.bmj.com/about-bmj
http://annals.org/public/about.aspx
ただし、ジャーナルの中にはインパクトファクターを掲載していない場合もあるので、Journal Citation Reportsを利用できるのであれば、Journal Citation Reportsで調べるのが簡単です。