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令和元年度「科研費」から見る日本の医学研究の課題とは?

様々な分野の研究の成果を向上させることを目的に支援される「科研費」。令和元年度は新たな応募の中から2万8992件が採択され、継続分と合わせると7万8650件に対して2154億円の科研費が分配されました。

令和元年度は科研費自体の予算が増えたこともあり、採択件数は前年より12.0%増加したとのことです。前回は、採択された研究種目別の状況について詳しく解説しました。今回は、採択された研究の実施者の属性について見ていきましょう。

研究者に性差はあるの?

令和元年度に新規応募があった研究は10万1857件のうち、採択されたのは2万8892件。新規採択率は28.4%でした。

男女別に見ると、新規応募の78.9%は男性研究者によるもので女性研究者によるものは20.7%を占めたとのことです。そのうち、実際に採択された研究のうち、男性研究者のものが78.4%。女性研究者のものは21.6%を占めます。

近年、多くの研究分野で女性研究者が増えてきたことも影響し、女性研究者の採択件数・比率はともに増加傾向にあります。平成27年における女性研究者の採択比率は19.2%であり、年々比率は右肩上がりに増加しており、採択件数自体は過去五年間で23.3%も増加しているのとことです。

また、研究種目別に見ると、女性研究者の採択率が男性よりも特に高いのは特別推進研究(男性10.2%、女性25.0%)です。特別推進研究とは新しい学術を切り拓くことが期待される優れて独創性のある研究で、択一した研究成果が期待される研究のことを指します。この研究種目で女性の採択率が特に高いことを見ると、日本でも有望な女性研究者が出てきたことが伺えます。

さらに、特別推進研究として採択された研究の中で、将来的に医学への応用が期待されうる生物系3課題のうち2課題は女性研究者によるものです。医学研究の分野でも女性研究者の活躍が益々増えてくることが伺える結果と言ってよいでしょう。

研究者の年齢は?

令和元年度における40歳未満の若手研究者による研究の採択率は過去五年間の中で最も高くなりました。

研究者の年齢別の応募数から見ると、40歳未満28.3%、40代33.9%、50代は27.2%、60歳以上は10.6%を占めます。一方、実際の採択数は40歳未満37.9%、40代32.9%、50代21.3%、60歳以上7.8%と、若手研究者の割合が最も高くなっています。新規採択率は研究者の年代が上がるほど低くなり、全体の平均が28.4%のところ、40歳未満の研究者は38.0%と突出して高いことも分かりました。

これは、若手研究という種目が設定されてることも大きな要因と考えられますが、基礎研究分野でも30~40%以上の採択率に上り、若い研究者が様々な分野で奮闘していることが伺えます。 医学分野においても若手研究者の台頭が待たれるところですが、唯一挑戦的研究(開拓)という種目の採択率が2.9%と突出して低いのが目立ちます。未来を担う若手研究者が独創的で柔軟性のある思考で研究を行っていけるような環境づくりも今後の課題となるでしょう。

参考文献

文部科学省 令和元年度科学研究費助成事業の配分について

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