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化学技術指標2019に見る日本の科学研究の課題とは?

科学技術・学術政策研究所より「科学技術指標2019」が公表され、日本における科学研究の現状が浮き彫りになりました。
そこで今回は、「科学技術指標2019」から見る日本の科学研究上の課題を解説していきます。

「科学技術指標」とは?

化学研究指標とは、日本を含む7主要国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づいて分析したものです。科学技術活動を研究開発費・研究開発人材費・高等教育と科学技術人材・研究開発のアウトプット・科学技術とイノベーションの5つのカテゴリーに分類し、180もの指標で各国の活動状況が評価されています。

化学研究指標は毎年、文科省の一機関から発表されており、本年は部門別博士号保持者数やその推移など新たに20の指標が追加されました。

「科学技術指標2019」における日本の評価は?

化学技術指標2019では日本はどのような評価を受けたのでしょうか?詳しくみてみましょう。

<研究開発費・研究者数は恵まれている>
日本の科学に対する研究開発費と研究に携わる人数は7か国中3位でした。しかし、研究開発費に関しては、トップ2のアメリカと中国が年を追うごとに大きく増加しているのに対し、日本は年々増加しているもののその伸び率は緩やかなのが特徴です。医薬品等製造業の研究開発費に関しては2008年からほとんど変わっていないことも分かりました。

一方、日本の研究者数も研究開発費と同様、緩やかな増加を認めるものの、中国やアメリカなどのような急増は見られません。企業に所属する研究者の中で保健分野を専門とするのは全体のわずか3.0%で、その多くが医薬品製造業に就いています。

<論文数は世界第4位!でも注目度の高い論文は…?>
2015~2017年に発表された日本の自然科学系論文は63725編と世界第4位にランクインしています。論文は科学技術研究のアウトプットと言えますので、日本の科学技術研究は研究開発費や研究者数の豊かさと比例して多くの成果が得られていることが伺えます。

しかしながら、10年前と比べるとその数は減少しており、世界ランキングもダウンしているのが気になるところ。また、注目度の高い論文(Top10%補正論文数、Top1%補正論文数※)に限れば、日本は世界9位と大幅にダウンします。その一方で、日本の論文は引用される回数が多く、世界の科学技術に多く取り入れられていることが伺えます。しかし、日本は他国の論文を引用する割合は低く、他国の科学技術を応用した研究が少ないことが示唆されています。

※Top10%補正論文数、Top1%補正論文数
Top10%(Top1%)補正論文数とは、被引用回数が各年各分野で上位10%(1%)に入る論文の抽出後、実数で論文数の1/10(1/100)となるように補正を加えた論文数を指す。

浮き彫りになった日本の科学技術研究の問題点とは?

科学技術指標2019から、日本は研究者数の増加はあるものの上位国に比べて研究開発費の上昇率が低く、他国の研究成果を積極的に取り入れる習慣が少ないことがわかりました。

新たな科学技術を作り出すには莫大な労力と費用がかかります。近年、医学分野も含めて薄給なためアルバイトなどを掛け持ちする研究者も少なくありません。人数が増えている分、それに伴って研究開発費も適切に上昇することが望ましいと考えられます。

また、日本は他国の研究成果を積極的に取り入れる習慣が少ないため、他国に比べて科学技術が遅れてしまう可能性もあるでしょう。インターネットなどで世界中の最新論文を閲覧できる現代ですから、内々にまとまらず世界の情報にもアンテナを張ることが大切です。

参考文献

科学技術指標2019

  • 英文校正
  • 英訳
  • 和訳
※価格は税抜き表記になります