研究者一人一人に割り振られる16桁のID「ORCID」
ジャーナルに論文を投稿するとき、ORCIDの入力を求められたことはないでしょうか。ORCIDは研究者一人一人に割り振られたIDであり、いわば「研究者マイナンバー」とも呼べるものです。
同姓同名、改姓に関係なく同一研究者を追跡することが目的
ORCID(Open Researcher and Contributor ID)は、複数の学術コミュニティ機関によって設立された非営利団体のORCID.orgが管理するIDであり、ORCID.orgで無料で登録できます。登録すると16桁の番号が与えられ、これが自分だけのORCID IDとなります。ORCIDには、詳しい所属、過去の論文や助成金、特許情報などを登録できます。2012年のサービス開始以降、すでに400万人以上が登録しています。
ORCIDというシステムが生まれた背景には、同一研究者を簡単に追跡できるようにしたいという目的があります。研究者の数が増えるにつれて、同姓同名の研究者を区別しにくくなるという問題が生じています。特に姓・名の種類が少ない中国や韓国の研究者では、この問題が顕著です。また、結婚などによる改姓によって名前が変わると追跡が困難になることは、しばしば日本の女性研究者が直面する問題です。こうした問題を解決するため、研究者を16桁の番号で管理しようとするのがORCIDです。
ORCIDによるシングルサインオン、自動アップデート機能
出版社も、ORCIDをサポートする動きが出ています。最近では、論文投稿時にORCIDの入力を求めるジャーナルが増えてきました。Wiley、PLOS、Scienceなどが刊行するジャーナルは、論文投稿時に投稿著者のORCIDの入力を必須としています。日本でも2016年8月より、日本疫学会が代表著者のORCID入力を義務化しました。
また、一部のジャーナルでは、ORCIDによるシングルサインオン機能が利用できます。ジャーナルごとにログインIDとパスワードを使い分ける必要がなくなるため、利便性という意味でも広がりを見せつつあります。
なお、論文投稿時にORCID情報を記載しておくと、論文が掲載されたときにORCID情報に自動で論文情報が追加されるようになります(自動アップデート機能)。
今後、ORCIDを使う機会が増えると予想されます。論文投稿時にORCID入力を義務化するジャーナルが増えているため、取得だけでもしておきましょう。