2015年のインパクトファクターを読み解く
ジャーナルを評価する指標として最も使われているのが「インパクトファクター」です。毎年6月から7月にかけて、前年のインパクトファクターがトムソンロイター社から公開されます。主要ジャーナルを中心に、インパクトファクターの動向を紹介します。
『NEJM』への一極集中を示唆する結果
「世界五大医学ジャーナル」と呼ばれているジャーナルの、2015年のインパクトファクターは以下になります(かっこ内は昨年の数値)。
The New England Journal of Medicine: 59.6(55.9)
The Lancet: 44.0(45.2)
Journal of American Medical Association: 37.7(35.3)
British Medical Journal (BMJ): 20.0(17.4)
Annals of Internal Medicine: 16.4(17.8)
『The Lancet』と『Annals of Internal Medicine』は微減したものの、他は増加しています。中でも『NEJM』は4ポイント近く増加し、60の大台に近づいています。これは、『NEJM』への一極集中を示唆するものかもしれません。
『NEJM』には、循環器や呼吸器などに関する大規模な臨床試験(多施設ランダム化試験など)が多数報告されており、後に掲載される論文で引用されやすい特徴があります。論文執筆側も、大規模臨床試験なら『NEJM』にアクセプトされるだろうと見込む傾向があります。このサイクルが、高いインパクトファクターを維持する理由であると考えられます。
微減が目立つオープンアクセスジャーナル
一方、著名なオープンアクセスジャーナルは微減が目立ちます。オープンアクセスジャーナルの先駆けともいえるPLOSの医学系ジャーナル『PLOS Medicine』は昨年の14.4から13.6、ネイチャー・パブリッシング・グループの『Scientific Reports』は5.6から5.2に下げました。
しかしながら、総引用回数は『PLOS Medicine』は2万499回、『Scientific Reports』は4万6918回と、インパクトファクターとは逆の結果になっており、ジャーナルの価値はインパクトファクターだけで判断できないと言えそうです。
オープンアクセスジャーナルは複数の視点から評価する
オープンアクセスジャーナルは従来の冊子とは異なり、ページ数や掲載論文数に制限がなく、多くの論文を採択する傾向があります。インパクトファクターを算出するときの母数が大きくなりやすく、従来の冊子と同列で比較するのは難しいのかもしれません。オープンアクセスジャーナルを評価するときには総引用回数など、いくつかの視点をもつことが必要になるでしょう。