医学論文に使える英語表現を見つけるためのGoogle検索フレーズ②材料と方法
この記事では、医学分野の論文の「材料と方法」のセクションを英語で執筆する際に役立つ検索フレーズをご紹介します。
論文でよく用いられる英文のフレーズを引用符(” “)で括っているので、そのままコピーしてGoogleやGoogle Scholarで検索できます。ヒット数が少ない場合は、フレーズを分割して再検索したり、アスタリスク(*)を用いたワイルドカード検索を併用したりするのもおすすめです。
研究対象を記載するときの検索フレーズ
「材料と方法」のセクションでは、第三者が研究を再現できるように詳細に記載するほか、研究に際して参考にした文献や先行研究に関する論文、研究において取り扱った患者の属性などを正確に記載します。
例えば、研究の対象となる患者の属性について「対象は~の手術を受けた~患者~人である」と表現したいときは、以下のフレーズで検索すると参考になる表現を見つけられます。
“patients with * who had undergone * were included”
“We studied * patients with * who had undergone”
患者の病歴や家族歴について記載するときは、以下のようなフレーズが役立ちます。ここでは代表例としてheまたはhisを使用していますが、患者の性別によってhis/herを適宜使い分けてください。
“his past history”
“his family history”
“He had no history of”
一方、患者の家族に何らかの病歴があった場合は次のようなフレーズが良く使われます。
“His family history showed”
例えば男性患者の父親に何等かの既往歴があった場合は、次のように書きます。対象者や病名の部分を適宜置き換えたり、アスタリスク(*)で検索したりして参考になる表現を見つけてください。
“He had a family history of * in his father”
特に病歴がなく生来健康であった人を研究対象とする場合は、次のようなフレーズで検索してみましょう。
“who had been healthy all his life”
“with no medical history of note”
“with no significant medical history”
研究内容によっては、患者の喫煙歴について明確に記載するケースもあります。例えば「彼は〇年間、1日あたり〇本の喫煙歴があった」と書く場合は、次のようになります。
“He had a smoking history of * cigarettes per day for * years.”
“He had a history of smoking * cigarettes per day for * years.”
患者の過去の受診歴について、例えば「患者は~と指摘された」と書きたいとき、The patient was pointed out to have~ と直訳することはほとんどありません。実際にはfound(見つかる)やnoted(言及される)などがよく使われます。次のフレーズでGoogle検索して例文を探してみてください。
“The patient was found to have”
“The patient was noted to have”
また、上記の例文に続いて「(~を指摘されたが)治療を受けなかった」「受診しなかった」あるいは「放置していた」と書く場合は、次のようなフレーズが役立ちます。
“but did not seek medical treatment”
“but did not seek medical attention”
“but left it untreated”
「当院を受診した」というフレーズにも、次のようなバリエーションがあります。
“visited our hospital”
“presented to our hospital”
また、「精密検査のため(当院)に紹介された」という場合は次のように書きます。
“was referred to our hospital for detailed examination”
“was referred to our hospital for further examination”
患者の症状について記載するときの検索フレーズ
患者にさまざまな症状が出現していることを表現するためのフレーズを紹介します。症状を差し替えたり、アスタリスク(*)を使ったワイルドカード検索を活用したりして、参考になる表現を見つけてください。
例えば、「患者に腹痛が出現した」と書く場合はこのようになります。
“The patient developed abdominal pain”
腹部(abdominal)の部分をアスタリスク(*)に置き換えることで、さまざまな部位の痛みに関する表現を見つけることができます。
“The patient developed * pain”
初発症状として発熱がみられた場合は次のように表現します。前置詞withのあとにfever(熱)ではなく、* pain(ある部分の痛み)やseizures(発作)などを挿入することもできます。
“The patient initially presented with fever”
さらに、「(病名)を初発症状とする~の一例」のような表現もよく使われます。withの後に任意の病名を挿入して検索してみてください。
“A case of * presenting with”
なお、「(~の症状)を呈する患者」や「~を呈する疾患」と表現する際、presentという動詞を用いることが多いですが、適切な主語や組み合わせる前置詞に悩むこともあるかもしれません。例えば、”presenting with”で検索すると患者(patients)を主語にすることが多く、”presenting as”で検索すると疾患名を主語にすることが多いことが分かります。このように、文法上の正しい用法について知りたいときもGoogleで検索するのがおすすめです。
目立った症状がなく、「症状に乏しい」や「比較的無症状である」のように表現する場合は、文脈により使い分ける必要があります。例えば、主語を患者(patients)または疾患の名称にする場合は、次のフレーズが良く使われます。
“has few symptoms”
“have few symptoms”
“is oligosymptomatic”
“is relatively asymptomatic”
同じような主旨で、無生物主語である疾患名を主語にすることもできます。
“present few symptoms”
“produces few symptoms”
“causes few symptoms”
また、「~の症状を伴わないため」を表す次のフレーズで検索すると、アスタリスク(*)の部分にさまざまな語句が入ることが分かります。
“in the absence of * symptoms”
検査方法について記載するときの検索フレーズ
材料と方法のセクションでは、どのような手段で何を検査し、どうやって分析したかを明確にする必要があります。例えば、「~を分析(検査、評価)した」と書く場合は、Weを主語として次のように記載します。
“We analyzed * cases of”
他にも、患者(patients)を主語にするか、分析の対象となる事物を主語にして次のように表現することもできます。
“patients were analyzed for”
“were analyzed in”または”was analyzed in”
患者を2つのグループに分けて比較分析を行う場合は、「A群とB群について~を比較した」という次のフレーズで検索してみましょう。
“Groups A and B were compared regarding”
“was compared between groups A and B”
検査数値の「推移を調べた」と表現したい場合は、次のフレーズで検索するのがおすすめです。一緒に使われる動詞として、analyzed, examined, investigated, clarified などが用いられていることが分かります。
“the changes in the level of”
ここからは、さまざまな検査方法について英語で表現する際の具体例を紹介します。
「~の細胞増殖抑制効果」(inhibitoryの代わりにinhibitingでも可)
“The inhibitory effect of * on cell growth”
“The cell growth-inhibitory effect of”
「抗体を使った免疫組織化学的染色」
“sections were immunohistochemically stained with anti-“
“sections were incubated with the secondary antibody for * min”
“Color was developed by the addition of”
「遺伝子発現の有無(を検査する)」
“the presence or absence of * gene expression”
“the status of * gene expression”
「~の発現レベル」※RNAやさまざまな遺伝子(gene)、蛋白(protein)などの発現レベル
“the levels of * expression”
“the expression levels of”
文脈によって、levelsまたはlevelを使い分けてください。
「アルコールの血中濃度」
“blood alcohol levels”
“alcohol levels in the blood”
“levels of alcohol in the blood”
“blood levels of alcohol”
なお、アルコール(alcohol)の部分はコレステロール(cholesterol)などの単語に置き換えることもできます。
症状や健康状態について、経時的変化や時間的経過を記述する場合は次のフレーズで検索すると参考になる表現を見つけられます。
“time-dependent changes in”
“time-related changes in”
“the time course of changes in”
“time-lapse * of”
“time-lapse * in”
特に、アスタリスク(*)を用いた最後の2例で検索すると、lapse の後に study, changes, photography, microscopy, imaging, monitoring などの言葉が続くことがわかります。
研究に際し、仮説として「所見から~を疑った」と記述する場合は、次のようなフレーズがよく使われます。
“These findings suggested”
“These findings led to a suspicion of”
“These findings led us to suspect”
“From these findings, we suspected”
また、「(ある傷病の存在)を疑って、ある検査・手術・処置を行った」と記述するときは、次のフレーズを用います。
“Suspecting *, we performed”
“We suspected * and performed”
その他、医学論文の材料と方法セクションによくある検索フレーズ
最後に、医学論文によく用いられるその他のフレーズをご紹介します。これらのフレーズをGoogleやGoogle Scholarで検索し、表現のバリエーションを広げましょう。
「~のラットモデルを使って」
“in a rat model of”
「(当院の)~科と相談して」
“on consultation with the Department of”
“in consultation with the Department of”
“after consultation with the Department of”
「(患者は)ショック状態に陥った」※ショック状態(shock)を昏睡(coma)などに置き換えることもできます。
“went into shock”
“lapsed into shock”
“fell into shock”
“developed coma”
「化学療法中の患者」
“patients receiving chemotherapy”
“patients on chemotherapy”
医学論文によく用いられる統計的分析については、以下のキーワードで検索すると必要な例文を見つけることができます。
Student’s t-test
Kaplan-Meier method
chi-square test
P value
multivariate analysis
医学論文の「材料と方法」に役立つ検索フレーズは以上です。引用符(” “)やアスタリスク(*)を用いたGoogle検索法の詳細は、以下の記事もご参考ください。
英語論文の執筆に役立つGoogle検索法
Google検索を使いこなして英語で医学論文を書く