文献レビュー(レビュー論文)の書き方
文献レビューとは、あるテーマについて書かれた複数の論文について分析し、概要や評価などをまとめたものです。その研究分野における既存の文献を網羅しているため、先行研究の傾向や課題を広く把握するのに役立ちます。文献レビューの具体的な執筆のステップや、レビュー論文の書き方について説明します。
文献レビューの目的と有用性
論文の冒頭にある序論(イントロダクション)では、研究の背景や先行研究に関する文献レビュー、研究対象の課題や研究の目的などを簡潔にまとめる必要があります。特に、文献レビューは先行研究の現状や概要、課題を分かりやすくまとめ、自分の研究がこの分野でどこに位置づけられるのかを定義づける重要なセクションです。
文献レビューを丁寧かつ簡潔にまとめることで、執筆している研究者が先行研究をきちんと把握し、この分野について議論する土台があることをアピールできます。逆に、丁寧な文献レビューがなく序論に不明瞭な点がある論文は、本論や結論がいかに充実していてもリジェクトされる可能性が高くなります。
また、文献レビューのみを一つの論文としてまとめたものを「レビュー論文」といいます。その分野における課題や先行研究の現状を理解し、まだ行われていない研究や新たな研究分野を知るのに役立ちます。その分野を新たに研究しようとする研究者にとっては初期に読むべき論文であり、すべての文献を精読する時間のない多忙な研究者にとっても有益な情報収集手段といえます。レビュー論文の書き方も、序論の一セクションとしてまとめる文献レビューと基本的に同じです。
文献レビューの書き方
文献レビューでは、先行研究に関する文献を徹底的に調査・分析し、広く網羅しながら完結にまとめる必要があります。具体的な書き方をステップごとに説明します。
ステップ1 テーマ選択とキーワードリストの作成
研究分野の中でさらにテーマを絞り込み、適切な一次資料を探すためのキーワードをピックアップします。その分野における情報を偏りなく収集し、有効な研究結果もそうではないものも理由とあわせて提示する必要があります。過去に書かれた論文の文献レビューや体系的にまとめられたレビュー論文なども参考にしながら、適切なキーワードを選びリスト化しましょう。
ステップ2 文献の検索と収集
ステップ1で集めたキーワードを、学術検索エンジンを使って検索します。自身が書こうとする論文の目的に沿っていること、著者の立てた仮説や方法が適切であり根拠や主張にも正当性があること、執筆時点で最新のエビデンスに基づき結果を正確に述べていることなどを踏まえながら、文献の取捨選択をします。
読者が近年の傾向や重要トピックスを知るのにも役立つよう、最新の論文や引用数の多い論文は必ず網羅します。他の論文で引用されている文献を参照したり、同じ著者の他の文献を探したりするのも効果的です。また、近年は分野を横断して行われる研究も多いため、研究分野を限定せず広い視野で文献を収集するのがおすすめです。収集した文献は、参考文献管理ツールなどを活用して適切に管理しておきましょう。
テーマと関連性の低い文献が多く集まったり、焦点がぼやけたりしてしまう場合は、ステップ1に戻ります。キーワードを再検討したり、同義語や類義語に置き換えたりしながら検索を繰り返します。このとき、すべての段階において文献を選んだ基準を記録しておきましょう。文献の選別プロセスを簡潔に説明することは、これから書こうとする文献レビューの透明性・公正性・再現性につながります。
ステップ3 執筆
収集した文献を時系列に沿ってまとめるか、テーマ別にまとめるか、自分の主張したいテーマに沿って切り口を設定しましょう。時系列に沿ってまとめる場合は、調査した論文を出版年月日の順に並べ、研究がどのように発展してきたかという視点で執筆します。どの期間で区切るかによって、先行研究がいかに変遷してきたのかを読者に分かりやすく伝えることができます。テーマ別にまとめる場合は、出版年月日の時系列に関係なく論点や概念ごとに既存の文献をまとめます。単なる文献リストにならないよう、執筆者独自の視点や主張を述べることが重要です。
各論文で述べられている主張や結論を簡潔に要約し、共通点や矛盾点、すでに明らかにされた点やまだ明らかになっていない点を分析・考察しましょう。集めた文献をただ要約して並べるだけでは、単なる文献リストと変わりません。執筆者独自の視点をふまえ、先行研究ではまだ解決されていない課題や研究の余白などのリサーチギャップについても言及しましょう。
また、読み手がそのレビュー論文で取り上げた一次資料にアプローチしやすいよう、参考文献の情報はできるだけ詳しく記述しましょう。
よりよい文献レビューを書くために注意すること
優れた文献レビュー(レビュー論文)は、その分野におけるさまざまな研究を網羅し、論理的な構成に基づいて簡潔かつ分かりやすい文章でまとめられています。引用のルールを守り、剽窃や盗用にならないよう注意することはもちろん、収集した文献に偏りがないこと、未発表の文献を含んでいないことも重要です。執筆者のバイアスがかからないよう文献を正しく評価することを心がけましょう。