2022年のオープンアクセス出版に関するトピックス
シュプリンガー・ネイチャー社をはじめとする多くの学術出版社によって、論文のOA出版は確実かつ加速度的に広まりつつあります。2022年に入り、すでに国内外においてOA出版に関する動きが活発化しています。ここでは、OA出版に関する海外および日本の最近のトピックスをご紹介します。
シュプリンガー・ネイチャー社がカナダとコロンビアにおいて初の転換契約を締結
2014年にオランダと初めて転換契約を交わして以来、シュプリンガー・ネイチャー社はさまざまな国と地域で転換契約を結び、ゴールドOA論文の出版に力を注いできました。2022年1月には、カナダの連邦科学図書館7つによって構成されたネットワークであるFederal Science Libraries Network（FSLN）との転換契約が始まっています。これにより、FSLNに加盟する機関から出版された論文はOA論文として利用できるようになりました。さらに2022年7月には、コロンビアの3つの研究機関および59もの高等教育機関を統括するConsorcio Colombiaとの転換契約がスタートすることになっています。
いずれもカナダおよびラテンアメリカにおける初の転換契約であり、シュプリンガー・ネイチャーが手がける2,000誌以上ものジャーナルにおいてOA出版が可能となります。両国の研究成果を世界に広め、オープンサイエンスを発展するのにも役立つことでしょう。
日本では4大学がWileyと転換契約に関する覚書を交わす
OA出版に関する動きは、日本においても活発になっています。2022年1月31日には、東北大学・東京工業大学・総合研究大学院大学・東京理科大学の4大学が、理工医学分野および人文社会科学分野の電子ジャーナル出版を進めてきたWileyとの間に論文のOA出版に関する覚書を交わしました。これは同年4月から始まる4大学との転換契約を見据えた動きであり、日本の研究者たちによる論文のOA化をよりいっそう促進するものです。
Wileyは200年以上の歴史を持つグローバル企業であり、韓国やスロベニア、アメリカをはじめとする各国の研究機関ともすでに同じような契約を締結しています。Wileyと4大学との転換契約が進むことで他の大学においてもOA出版が広まり、日本の研究成果が世界にますます大きなインパクトを与えることが期待されています。
オープンサイエンスのさらなる発展のために出版業界ができる「4つのP」
シュプリンガー・ネイチャー社は、2022年のオープンサイエンスをさらに加速させるために出版業界ができることとして、「4つのP」を挙げています。
１、Publishing 出版機能の活用
オープンサイエンスを推進するために、シュプリンガー・ネイチャー社がもつ出版機能を最大限活用すること
２、Policies ポリシーの策定・実行
オープンサイエンスおよび透明性を促進するポリシーを策定し、実行すること
３、Products プロセスと製品
著者にとってできる限り簡単にオープンサイエンスメソッドを実行できるよう、正しいプロセスおよび製品を有すること
４、Partnerships パートナーシップの構築
関心のある領域において業界全体のソリューションを推進するために、研究コミュニティーに属する他の研究者と協力し、パートナーシップを築くこと
さらに、これら4つのPに加えて重要なものとして、多様性・公正性・包括性（DEI; Diversity, Equity and Inclusion）についても触れています。シュプリンガー・ネイチャー社では、2022年も引き続きOA出版に全力を注ぎ、オープンサイエンスの実現に向けて取り組むとしています。
参考文献
Nature asia プレスリリース — シュプリンガー・ネイチャー、ラテンアメリカとカナダにおいて初の転換契約を結び、米州のオープンアクセスを継続してサポート
Springer Nature continues to support open access in the Americas with its first Transformative Agreements in Latin America and Canada
PR TIMES — ワイリー・パブリッシング・ジャパン株式会社 — 東北大学・東京工業大学・総合研究大学院大学・東京理科大学とWiley、日本発の研究成果のオープンアクセス化の促進に関する覚書に署名
Nature asia プレスリリース — CEOからのメッセージ：2022年にオープンサイエンスを推進するために必要なものとは？
Springer Nature — What’s needed to drive open science in 2022?
