医学英語論文の書き方マニュアル – 7:エポニム
医学英語総合サービスでは、弊社の校正・翻訳・投稿支援を利用くださったお客様に、月1回お知らせレターを配信しております。One Point Englishのショートメッセージも配信していますのでご紹介します。
One Point English:エポニムについて: ANA MANUAL OF STYLEからの情報(Part 1)
“Alzheimer’s disease” “Alzheimer disease” どちらも論文に使用されていますが、どちらを使うべきだろうと思ったことはありませんか? 所有格を用いることについては、論争が続いてきていますが、所有格を用いない方向へ推移しているようです。
エポニム Eponyms
エポニムとは、人名あるいは場所に由来する言葉あるいはそれらのものを含む言葉のことです。医学書や科学文書では、疾病や症候群、徴候、検査法、方法、手順などの内容を記述するのに、説明的あるいは形容詞的な意味で使われています。
エポニマス・ターム(例)
Alzheimer disease;アルツハイマー病:Alois Alzheimer (1964-1915)が、記憶障害から始まり認知機能が急速に悪化し、発症後約10年で死に至った50代女性患者について報告。
Murphy sign;マーフィー徴候:徴候を最初に記述したシカゴの医師John Benjamin Murphyに由来
Christmas disease;クリスマス病;患者Stephen Christmas氏に由来:これを記述した論文がBritish Medical Journalのクリスマス号であったのは偶然のこと。
Lyme disease;ライム病;アメリカのコネチカット州Lymeで1975年に最初に確認された。
多くのエポニムは、同じ疾病や状態、手順に用いられる単語あるいはフレーズからなるノンエポニマス・タームに置き換えることができます。
ノンエポニマス・タームを用いることで、部位や機能についての情報がもたらされるでしょうし、国際的な医学コミュニケーションにおいて明確さを高めるという目標に寄与するものと考えられます。
ノンエポニマス・ターム
Paget disease of bone(パジェット骨病)の代わりにosteitis deformans(変形性骨炎)
Gasser syndrome(ガッサー(ガッセル)症候群)の代わりに hemolytic uremic syndrome(溶血性尿毒症症候群)などと表現します。
併記方法
エポニムのほうが読者にとってわかりやすいという観点から、エポニマス・タームを最初に記載した後の括弧内に記述的表現を挿入することもあります。
Stein-Leventhal (polycystic ovary) syndrome(Stein-Leventhal(多嚢胞卵巣)症候群)
Stevens-Johnson syndrome (bullous erythema multiforme)(スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)
表記方法
●名詞や名詞に伴う冠詞が先行しないエポニムについては、大文字で始めます:
Babinski sign(バビンスキー徴候)
Osler nodes(オスラー結節)
Fisher exact test(フィッシャーの直接法)(正確検定)(直接確率法)
●固有名詞の派生形容詞は、大文字で始めることはしません。例えば:
parkinsonian gait (パーキンソン歩行;パーキンソン病から派生した形容詞)